英会話習得に文法は必要ないのか?

2020年8月31日コラム

赤ん坊、幼児は文法なしで言葉を覚える。
そりゃそうだ!言語自体をしらないわけだから文法を教えようがない。

つまり言語を全くのゼロから覚える。

母親が話しかける言葉の音の違いを聞き取り、そしてちょっとづつ単語を覚え、単語の順番が何を意味するか把握していく。

つまり自分でその言語の文法を推測して理解していくというすごい作業をやっているのだ。

現在・過去・未来という概念がある事も当然しらない。
日々の生活から漠然とそれらの概念をほんの少しづつ意識していく。

「文法なんか知らなくたって子供の頃から日本語を話せた、だからこれからする英語の勉強も文法なんか知らなくたっていいはずだ。」というあなた、

ほんとに文法の知識なしに子供のように3、4年で新しい言語が喋れるようになると思っていますか?

そう思うのなら騙されたと思ってこの記事を読んでみてください。

人は無意識に母国語の文法を理解しているから喋れるのです。

この記事でわかる事
・効率良く言語を習得するには文法は不可欠
・文法がわかればパズルのピースを並べていくように文章が組み立てられる
・英語を話すのも聞くのも文法というルールを知らないと苦労する

あなたは赤ちゃんがゼロから言語を覚えるような困難なプロセスで英語を習得したいのか?

 

あなたは小学校で国語の授業を受ける前から日本語を話せていましたか?

当然話せていましたよね。

「好き」「が」「私」「犬」「は」
順番を並び替えて文にしてくださいという問題で

好きは私が犬。

と答える日本人の子供はいません。誰でも

私は犬が好き。

と答えます。

これは文法をしっかり理解しているからです。

「主語」「動詞」などの用語を知らなくても「日本語のルール」としての文法を理解しているからです。

すべての子どもたちは語学の天才

すべての子どもたちは生まれてからたった4、5年で大人達が話す日本語を聞いてそこから「日本語のルール」を推測して理解する能力を持っています。
ものすごい能力です。

この能力は7歳程度を過ぎるとどんどん失われていき17歳を過ぎたあたりでほとんどなくなる事が実験で実証されています。

このため幼少期を外国で過ごしたいわゆる帰国子女はバイリンガルになるのです。
英語圏にいた場合は家の外では英語で暮らし、家庭内では日本語で暮らすからですね。

「文法」なんて必要ない。
ただただ英語の環境に身を置けばいいんだ。
そう言って文法をまったく勉強せず留学をしてつらい体験をして、ほとんど英語が身につかず帰国する人。

こういう人が英語を習得するには赤ちゃんと同じやり方になりますよね。
自分で言語のルールを推測して身につけていく。

大人になってからこんな方法で言語を覚えるのは大量の時間が必要になるでしょう。

聴覚障がい者の文法

生まれつき耳の聞こえない聴覚障がい者の方は「音」として日本語を聞いたことがないんです。

こういう方は筆談での文章で文法の間違いが少なくないそうです。

「時計が遅れています。」

これを

「時計に遅れています。」

このような間違いをするそうです。

普通に文章が読めれば間違えないように感じますよね?

でも音として文法を身につけていないとこのような基本的な文法を間違ってしまうという事なんです。

文法をやっただけでは英会話は出来ない?

あたりまえじゃないですか!

文法を勉強しただけのあなたはゲームの「やり方・ルール」を覚えただけです。

パズルのピースを並び替えるだけのゲームなら出来るでしょうが、生身の人間を相手に会話することに関しては「ゲームスタート」していないのです。

英語の音を聞き取る、自分で英語の音を発する。
これらは「やり方・ルール」とは別次元の訓練です。

相手の話してる言語(音)が聞き取れて、その「規則・ルール」がわかっているなら当然理解出来ますよね。

しかし「規則・ルール」はわかっているが相手の話してる言語(音)が聞き取れなかったら理解出来ませんよね。

こういう例えはどうでしょうか。

野球の試合をするにはルールがわかっていないと出来ない。
しかしルールを熟知している女子マネージャーではゲームの戦力にはならないです。

ルールを覚えただけでは野球の試合は出来ない。(当たり前)
文法を覚えただけでは英会話は出来ない。(当たり前)

例をもうひとつ。

自動車教習場では実技と学科に分かれていますよね。
その学科試験だけにパスしたって運転は出来ませんし免許ももらえません。
実技の授業で実際に車を運転しないとだめなのは当然ですよね。

同じように「文法をやっただけでは英会話は出来ない」のは当たり前なんです。

文法をやっていると自然に英語の長い文章が理解出来るようになる

短い文章ならそれぞれの単語の意味を知っていれば、だいたい雰囲気で文章の意味はわかるでしょう。

しかし長い文章になるとそれぞれの単語の意味は知っていても、全体として何をいっているのかわからなくなってしまいます

これはまさに文法(ルール)が把握出来ていないために起こる事です。

文法をシンプルに捉えるようにしましょう。
文法をおおまかに2つのルールにわけます。

  • 単語の形を変えるルール
  • 単語の並べ方のルール

単語の形を変えるルール

状況に応じて単語の形を変えるというルールです。

例)
一人称、2人称、3人称など、人称で変わる。
現在、過去、未来、完了など時制で変わる。

単語の並べ方のルール

日本語との大きな違いが単語の並べ方だと言われています。

日本語だと

私は、彼に、明日、夕食に来てくれ、と頼んだ。
彼に、私は、明日、夕食に来てくれ、と頼んだ。
彼に、明日、夕食に来てくれと、私は、頼んだ。

こんなふうに、順番を自由自在に変えることができます。

ところが英語だと

I asked him to come to dinner tomorrow
私は、頼んだ、彼に、来て、夕食、明日

基本的にはこの順番だけです。

「誰が」I
「どうする」asked
「誰に」him
「何を」come
「どこに」dinner
「いつ」tomorrow

実にシンプルなんです。

日本語のように「は」を「に」変えれば順番を変えられるような複雑な構造にはなっていないのです。

文法を知らないと苦労すること

 

長い文章が理解出来ない

短い文章なら単語の意味がわかればほぼ理解出来るでしょう。

つまり「単語の意味だけを見てそれを辻褄のあうように自分の中で組み合わせる」という作業をしているわけです。

しかし、長い文章だと簡単な単語が使われていてその意味がわかったとしても、全体として何を言っているのかまったくわからない場合があります。

単語の数が増えるとその組み合わせの数も多くなり辻褄のあうように適当に組み合わせるという作業では全体の意味は理解出来ないためです。

テキスト(書かれた文章)なら時間をかけて考えればわかるかもしれません。

しかし、話し言葉では一瞬で理解しなければならず、そのためには文法の知識が必要なのです。

文法の理解が曖昧だと文法を無視してしまう

My friend Mike has been living in Africa for 20 years with his family.
単語の意味だけで拾っていくと
わたしの友達
マイク
住んでいる
アフリカ
20年(歳)
彼の家族

文法の理解が曖昧だと
「わたしの友人のマイクはアフリカに住んでいて20歳で家族と一緒です。」
のように、英語の文法は無視して日本語の文法にあうように辻褄をあわせて単語を繋げてしまう事になる。

正しくは「私の友人のマイクは家族と一緒にアフリカに20年間、ずっと住んでいます。」です。

自分で長い文章を組み立てられない

文法を理解出来ていないとぶつ切りの片言英語になってしまい、長いまとまった文章を話す事は出来ない。

たとえばこれくらいの文章なら
私は去年の秋、友達と一緒に京都を訪れた。

出川のてっちゃんみたいな片言英語でも通じる。
lastyear, autumn, I visited Kyoto, with my friend.

これでも十分通じるとおもうけど正しくは
I visited Kyoto with my friend last autumn.

でもちょっと長くなると

私が去年の秋、友達と一緒に京都を訪れたときに季節外れの台風が来ていて怖かった。

季節外れの台風 a seasonal typhoon を知っていたとしても片言英語では苦しくなってくる。

正解は

When I visited Kyoto with my friend last autumn, I was afraid that a seasonal typhoon was coming.

文法とはショートカットツール

言語をまったくのゼロから覚えるしかない赤ちゃんと違って、わたしたちのようにある程度年齢がいって母国語をしっかりと理解した者なら文法というものを意識できるようになる。

つまり言語には法則・ルールがあると意識出来る。
その状態で別の国の言語を学ぼうというときには文法を使った方が便利じゃない?

つまり文法とはショートカットツールなんですよ。

状況に応じた定型文をただただ100個暗記するより、定型分を作るルール(文法)を理解して文章を組み立てた方が効率はいいです。

新しい言語を習得するための近道

すでに母国語という言語を身につけていれば、
「誰が誰に対して現在(過去)の事を伝えているのか?」ということを意識して喋る。

主語・動詞・目的語なんて文法用語を意識していなくても、その機能は無意識に認識している。

わたしたちが日本語を話すとき文法は無意識に使っているんです。

すでに言語には規則・ルールがあるのを実感しているんです。

それなら新しく言語を覚える時には、その言語の規則・ルールを知った方が習得する近道になるはずですよね。

ぼくの個人的な文法勉強法

ぼくの考えでは「英会話をするのに文法の知識は必要」です。

じゃ文法の勉強、実際にはどうやっているの?

基本的にはたった1冊の参考書だけを使っています。

それも何十年も昔に古本屋で買った中学生だか、高校生の初期レベルだかの文法の本です。

ふる~い本なので書き方はわかりにくいですし、例文なんかも正直、今の時代には合わないかも知れません。

でも十分に活用出来ています。

文法なんて変わることのないルールですから、免許証取得のときに覚えなきゃいけない交通規則と変わりないと思っているからです。

「赤信号点滅では一時停止」、
「信号のない交差点では左方優先」、
こんな事はどの交通規則の本で学ぼうが違いはありません。

一般のドライバーに「2018年度の都条例による自動車高速道路の~」なんて細かいことは必要ありません。
公道を安全に走る基本的ルールがわかればいいのです。

英会話でも大学で教える、「より高度な学問としての文法の知識」は必要ではなく、今後も変わることのない基本的なルールだけを抑えておけば十分なのです。

だからぼくは中学生程度の文法の本、1冊で十分だと思っていて実際にもそうしています。

 

ゲームを始める前にルールを覚えましょう

シンプルに考えましょう。

「英会話」というゲームを始めるならルールを覚えてしまいましょう。

そのルールは中学生レベルの文法を理解する事で十分です。

いくらも時間はかかりませんよ。

本を買ってもいいですしネットでたくさん見つけられる英語を勉強するサイトでも知識は付けられますよね。

ちょっとだけ辛抱してルールを覚えちゃいましょう。


以上「英会話習得に文法は必要ないのか?」という記事でした。
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